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『ヘッジファンド』とは
『ヘッジ・ファンド』の詳しい実態をご存知の方は少ないと思います。
マーケットを動かすキーパーソンでもある謎の多い『ヘッジファンド』ですが、他では聞けない話も織り込みながら今回は解説していきます。
『ヘッジ・ファンド』とは、世界中のマーケットに対し非常に大きな影響力を持つ『投資家ファンド』の事を言います。
『ヘッジファンド』の『ヘッジ』は日本語で『避ける』と言う意味です。
近年の『ヘッジ・ファンド』は、マーケットのトレンドをつくるとまで言われています。
元々彼らは顧客から預かった資産の目減りを避けるといったワークから運用益を出していましたが、近年では『絶対リターン』を狙い、極めて高いリスクを取りにいくファンドの代名詞にもなりました。
こういった理由も背景に『ヘッジ・ファンド』を悪いイメージで見られる方も少なくないと思います。
特に個人投資家達を狙った動きも多いので、負のイメージが強いかも知れません。
余談ですが、私の個人的な知り合いで『ヘッジ・ファンド』の方(在シンガポール)が数名いますが、元々はバンカーや凄腕ディーラーと言われた方達です。
変わった方(良い意味で個性的な方)が多いのですが、どなたも相場師として高く認められてきた方達ばかりです。
※投資信託は公募投信で一般に募集されますが、『ヘッジファンド』は私募投信なので限られた人のみが出資して運用出来るファンドです。『ヘッジ・ファンド』は先ずこの私募投信で集めた運用資金を銀行に預託します。そしてこの運用資金を証拠金(マージン)にあてマーケットへ参入します。預託される保証金にレバレッジを効かせ、個人投資家では有り得ない運用資金量で取引を行います。『ヘッジ・ファンド』がマーケットを動かす要因と言われる理由がココにもあります。
『ヘッジ・ファンド』のその手法とは
『ヘッジファンド』は様々な手法を用いて複数の金融商品(金融派生商品等)を分散化し高い運用益を得ようとします。
先物はもちろんの事、信用取引まで幅広く収益をあげていきます。
FX(外国為替証拠金取引)は彼らが得意とする分野の一つでもあり、マーケットに参入する機会を常に伺っています。
また運用する手法も多様に使い分けするのが『ヘッジファンド』の特徴です。
例えば売り買いを組み合わせ、マーケット全体の値動きを最小限に抑える『ロング・ショート運用』や、『マーケット・ニュートラル運用』、マーケットへコミットし高いレバレッジをかけ運用する『マクロ運用』等、様々な手法を用いります。
マーケットを動かす2つの『ヘッジファンド』
マーケットに影響を及ぼす主な『ヘッジファンド』は2種類です。
- マクロファンド
- モデルファンド
『マクロファンド』
『マクロファンド』の手法は、ファンドマネージャーがファンダメンタルズ要因をウォッチし、どこでどういったポジションを持てば最も高いリターンが得れるかを判断し、コレを投資行動に移すといった『ヘッジファンド』です。
この『マクロファンドで有名なのがジョージ・ソロス氏率いるファンドです。(※ソロス・ファンド・マネージメントの事)
※一般のイメージでは、『マクロファンド』はファンダメンタルズを使った手法のみでマーケットへ参入しているという印象をお持ちの方が多いと思いますが、実はブレイクアウト手法も得意とします。これはレンジ帯を一旦ブレイクしたにも関わらず、ブレイク方向とは逆方向にレートを持って行く手法(※逆張り手法)なのですが、『ヘッジファンド』が人為的に仕掛けた罠だと言う事を多くの個人トレーダーは知る由も無いでしょう。
『モデルファンド』
『モデルファンド』はテクニカルをメインに取引します。
あらかじめシステム化された売買サインを使って売り買いを行うファンドだと思って下さい。
世界各国の経済指標(雇用統計等)の差値を数値化し、トレードにおける判断材料に応用する凄腕トレーダーの集団です。
分析手法のパターンはシステムを構築する開発者の数だけあると言われていますので、コレを解析するのは非常に困難だと言われています。
あと『モデルファンド』は取引するにあたり『短期売買』と『長期売買』の二つを持ち合わせています。
その時々のマーケット状況を分析し、その都度使い分けをするといった手法です。
『短期売買』では基本逆張りを行い、『長期売買』ではトレンドフォローを軸とした順張りで取引を行います。
『モデルファンド』で資金運用する投資家達は、この2つを使い分けします。
順張り型
『モデルファンド』はトレンドフォローを得意とし、マーケットの大きな流れに沿う手法をメインとして扱います。
中でも買いサインが出る度に買い乗せ&売り下がりを重ねる手法をメインとして扱う『順張り型』が多いと言われています。
あと前述した『マクロファンド』が得意とする『ブレイクアウト』でも参戦します。
『マクロファンド』では、分析者が培った経験で逆張りの裁量取引を行うのですが、『モデルファンド』は全て数値化されたシステムで順張りを行います。
ブレイクアウトをシステムが察知し、マーケットの強弱を数値化で判断し売り買いを仕掛けるのです。
ブレイクアウトの局面では、こういった『モデルファンド』や『マクロファンド』との壮絶な戦いの場所でもあるのです。
『逆張り型』とは
いわゆるオシレーター系を使用するものです。
皆さんも良くご存じのRSIやストキャスティクス等を用いた手法です。
もちろんコレだけで勝つことは困難なので、裁量取引と絡ませて売買を行います。
『モデルファンド』のマトメ
『モデルファンド』は、実態が掴みにくい『ヘッジファンド』でも有名です。
前述したオシレーター系でシステムを構築される方々は、いわゆる理工系に属するトップエリートの集団です。
因みに私の知人の一人はマサチューセッツ工科大卒です。
今回書き留めた内容を見て既に分かった方達も多いと思いますが、この『モデルファンド』はマーケットに対しニュートラル(中立)な立場の『ヘッジファンド』です。
これに対し『マクロファンド』は逆張りを得意とする相対的な『ヘッジファンド』になります。
『モデルファンド』は、トレードするにあたり私たち個人トレーダーが必要以上に意識する必要性はないでしょう。
『ヘッジファンド』の使用するレバレッジ
『ヘッジファンド』のレバレッジは90年代後半にあったロシア危機(※LTCMの破綻)がきっかけで、銀行側がレバレッジ規制に乗り出した経緯があります。
それ以前は今とはかけ離れたハイレバレッジで取引を行っていました。
当時の為替レートの動きを見れば一目瞭然ですが、『ヘッジファンド』のハイレバレッジで今より為替レートが大きく動いていたのが確認できます。
しかしレバレッジが下がった今でも、資金量の豊富さが変わらない『ヘッジファンド』はマーケットを動かすキーパーソンであるには変わりありません。
『ヘッジファンド』が起こした金融危機
では『ヘッジファンド』がマーケットで行った、過去の大きな事例を簡単に書き留めたいと思います。
先ず初めに今から約20年前に起こった『金融危機』について。
アジア通貨危機
1996〜1997年に起こった経済危機の事を言います。
東南アジア諸国(発端はタイ)に投資されていた多くの資金が短期間に海外へ流出し、その結果アジア諸国の通貨が暴落します。
コレを仕掛けたのが他ならぬ『ヘッジファンド』です。
これで莫大な収益を獲得した『ヘッジファンド』は新たに大きな仕掛けを行います。
1998年、ドル円の金利差に目を付けた多くの『ヘッジファンド』が極端な円売り行動に入ります。
言うまでもなく東京市場は激震に見舞われます。
ロシア経済危機
次は有名な金融危機でもある『ロシア経済危機』です。
ロシアに巨額投資していたアメリカの『ヘッジファンド(LTCM)』が先ず破綻します。
当時『LTCM』はノーベル賞受賞者も名前を連ねる凄腕ヘッジファンドで人気を博していました。
こういった信用力でアメリカの金融機関から巨額の資金を得ていたのです。
当然『LTCM』の破綻の影響が金融業界を覆います。
この事件以降、各銀行筋は為替トレートに消極的になっていきます。
高いレバレッジを抑えだしたのも調度この時期です。
『LTCM』の破綻以降、マーケットは流動性を欠きます。
相変わらず『ヘッジファンド』は暴落狙いでマーケットへ売りを仕込みます。
そして、ついにXデーが到来。
ドル円相場は10月2日〜9日の2日間だけで20円幅で暴落。
ナント2日間で20円です。
動かないドル円相場で年12円程度です。
20円幅が如何に大きい変動値かが分かるでしょう。