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ジョージ・ソロスのチャート
ヘッジファンド率いるアメリカ人の投資家、ジョージ・ソロス氏。
現代、世界一著名な投資家と言っても過言ではないでしょう。
今回はジョージ・ソロスが考案した『ソロスチャート』について分かりやすく解説を行います。
『ソロスチャート』とは
『ソロスチャート』とは、ある国とある国(2国間)のマネタリーベースを比較したチャートのことを言います。
『ソロスチャート』はジョージ・ソロス氏が考案したもので、外国為替相場がマネタリーベースとの相関性が高いことに着目し、2国間におけるマネタリーベースの比率と外為相場の値動きを比較し、投資に活用できるよう考案されたものです。
この『ソロスチャート』の見方では、資金供給量が多ければ多いほど、その国の通貨安が進みやすい傾向にあると言われています。
日本における『ソロスチャート』は、日本とアメリカ合衆国の通貨当局によるマネタリーベース(通貨供給量)での増減と、ドル・円相場の相関性を1つにマトメてグラフ化したものです。
『マネタリーベース』とは
日銀が新たな量的緩和策で、金融政策の操作目標を従来の無担保コール翌日物の金利から、『マネタリーベース』へと改めました。
この『マネタリーベース』とは、日本銀行が供給する資金量を示す指標の事を言います。
『マネタリーベース』は資金供給量とも言われており、紙幣と貨幣を合わせた発行高(現金)と、金融機関等が決済等で日銀に預けている当座預金残高の合計です。
『マネーストック』とは
この『マネタリーベース』を、『マネーストック』と同じ意味合いで使用されている方が多くいるのですが、内容は全く異なるものです。
国や金融機関以外の企業や一般家計等、一般の民間部門が保有する通貨の総量を示す指標の事を『マネーストック(旧マネーサプライ=通貨供給量)』と言うので注意が必要です。
『ソロスチャート』の見方
日本における『ソロスチャート』の見方ですが、アメリカ合衆国での『通貨供給量』が増えればドル安傾向になり、また日本の『通貨供給量』が増えれば円安になる傾向があるということを先ずは覚えておきましょう。
又、『ソロスチャート』を中・長期スパンで比較すると、マネタリーベースと為替レートがほぼ同じように推移するという特徴があります。
例えば、過去にあった円高ドル安(2007-2012年)については、アメリカ合衆国の『マネタリーベース』の増加があり、これに連動して為替レートが実際に推移している事が分かっています。
コロナショックを『ソロスチャート』で見る
コロナショックにより、未曽有の経済危機を迎えた世界経済。
アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)のドル資金発行に日銀の円資金発行が追いつかず、ここへタイムラグが生じると大幅な円高になります。
2008年9月に起こった金融危機、リーマン・ショックが正にそうでしょう。
現在コロナ禍の最中ですが、日本やアメリカ、ヨーローッパの中央銀行が金融の量的緩和を実行に移し、お金を刷り増していることを既に公表しています。
リーマンショック後のFRBのドル資金発行1ドル当たりの日銀資金発行額の推移を『ソロスチャート』で比較してみると、見事に相関が保たれていることに気が付くでしょう。
以前、日本政府の高官がジョージ・ソロス氏側近にこの事実を聞いたエピソードがあるのですが、ジョージ・ソロス氏側の回答は無関係との答えだったと報じられています。
『ソロスチャート』においては、学術的に対ドル・レートを左右するということは証明出来ておらず、その結果、合理的な考えを好むジョージ・ソロス氏は『ソロスチャート』で為替投機を行っていると思われるのが心外なのでしょうか。
しかし過去における『ソロスチャート』のデータを追ってみると、怖いぐらい実際のドル・円交換レートと関連性が高いのに気が付きます。
リーマンショック前(08年5月)、『ソロスチャート』のレートとドル円相場は1ドル=105円で一致。
またリーマンショック後、『FRB』は一挙にドルを刷りますが、当時日銀の白川総裁は円を刷りません。
その結果、『ソロスチャート』のレートは急激に下がり始めるのです。
また外国為替市場も、これに引きずられるように急激な円高局面に突入していきます。
この時の白川総裁は『金融政策ではデフレを解決できない』という趣旨を公表しています。
日本は、その後も東日本大震災を含め未曽有の金融危機を経験しますが、日銀の失態(金融の引き締め等)によりデフレの加速という経済危機に陥いります。
当時の政権を奪回(12年12月)した安倍首相の勝因は、この失態を軸に的を絞った日銀の量的緩和を主軸とするアベノミクスの提唱が幅広い層の支持を集めた事によるものです。
日銀の総裁は白川氏から黒田氏へと代わり、今度は異次元金融緩和に様変わりします。
するとどうでしょう、『ソロスチャート』は見事に反転し、円安局面に切り替わった後、1ドル=110円前後の水準で相場は安定するようになります。
そして今年に入り、新型コロナウイルスの影響を受け、FRBは3月中旬からリーマンショックをしのぐ勢いでドルの増刷を続けます。
これとは逆に日銀による円の増量幅は少なめです。
『ソロスチャート』におけるレートは2月に147円でしたが、4月には107円を付け、同月の円相場は106円台と円高に振れています。
コロナ禍以降の『ソロスチャート』の値動きは、リーマンショック後の動きと恐ろしいぐらい同じなのです。