【世界銀行とは】 わかりやすく解説

【世界銀行とは】 わかりやすく解説

 

『世界銀行』の元は国際復興開発銀行です。

 

皆さんが良く耳にする国際通貨基金(IMF)とも切っても切れない関係があります。

 

世界大戦を挟みながらの『世界銀行』の歩みや歴史、また組織編成等わかりやすく解説していきます。

 

 

 

世界銀行とは、分かりやすく
世界銀行を深堀する

『世界銀行』とは

 

『世界銀行』とは、わかりやすく言うと、世界各国の中央政府が債務保証を行った機関に融資を行う『国際機関』の事を言います。

 

日本では『世銀(せぎん)』と呼んでいます。

  • 英語表記:World Bank
  • 本部所在地:アメリカ合衆国ワシントンD.C.
  • 加盟国数:189ケ国

 

元々『世界銀行』は、国際復興開発銀行(IBRD)の事を指していましたが、現在は国際開発協会(IDA)と両方で構成されている組織となります。

 

『世界銀行』の役割として国際通貨基金(IMF)と協力し、第二次世界大戦後における世界の金融秩序制度の中心を担う事を目的とし、世界の貧困削減と継続的成長の実現に向けた、途上国に対する融資や技術協力、または政策助言を行ないます。

 

 

 


『世界銀行』の主な沿革

 

  • 1944年7月:ブレトン・ウッズ会議で『世界銀行』の元である国際復興開発銀行と国際通貨基金の設立を提言。
  • 1945年:国際復興開発銀行と国際通貨基金を設立。
  • 1946年6月:国際復興開発銀行と国際通貨基金が業務を開始。
  • 1947年:アメリカ合衆国のマーシャル・プランが開始されると、『世界銀行』は発展途上国への開発資金援助に特化する。
  • 1948年:『世界銀行』の融資額は3億7800万ドル、同年度のアメリカ合衆国におけるマーシャル・プランの融資額は約40億ドル超。
  • 1958年:1948年に行った『世界銀行』における融資額はピークを迎え、以降1958年までこの融資額を越えた年はなく、1950年代を通じ融資額は過去最低となる。

 

 

 

世界銀行とは、わかりやすく
大戦前後、混乱期の中の『世界銀行』

過去における『世界銀行』と社会主義国との関係

 

国際復興開発銀行と国際通貨基金の設立当初、国際通貨基金は国際収支の危機があれば短期資金供給を担い、また『世界銀行』は第二次世界大戦後の先進国の復興と発展途上国の開発目的を主とし、主に社会におけるインフラ構築などプロジェクトごとに長期資金の供給を目的としました。

 

国際復興開発銀行と国際通貨基金の両者はお互いを補足するカタチで設立されています。

 

また当時は旧ソビエト社会主義共和国連邦(現ロシア)は条約を守らず、出資金を払い込まなかったために国際復興開発銀行には加盟できず、冷戦終結に至るまで『世界銀行』における社会主義国側の活動は殆どありませんでした。

 

国際復興開発銀行が行った最初の融資は、フランスを始め第二次世界大戦で戦災を受けた西ヨーロッパ諸国が始まりです。

 

ですが、こうした先進諸国への復興融資は、設立後間もない『世界銀行』の資金力では乏しい現状を突き付けられています。

 

1948年における『世界銀行』の融資額は3億7800万ドルです。

 

アメリカ合衆国が行った同年度のマーシャル・プランでの融資総額は40億ドルを超え、アメリカ合衆国が直接西欧諸国の復興資金を拠出した方が、復興融資としての価値が高かったのです。

 

また、『世界銀行』において、アメリカ合衆国が本来実権を握っており、旧ソ連が『世界銀行』へ不参加した事に依り、『世界銀行』の融資はより一層西側諸国の支援の策となります。

 

こういった背景もあり、『世界銀行』は直接的な融資より、そのための調査を重点に行うような機関に転じ、沿革に示した通り1958年まで、1948年度の融資額を越えた年が存在しないほど、低調な融資機関となりました。

 

 

 

世界銀行とは、分かりやすく
『世界銀行』が変わるキッカケ

『世界銀行』の変革

 

  • 1968年〜

『世界銀行』を語る上でのキーパーソンは第5代世界銀行総裁ロバート・マクナマラ氏といっても過言では無いでしょう。

 

わかりやすくいうと、彼が就任すると同時に『世界銀行』は変革を始めます。

 

1968年の定例総会での発言で、全融資額を『1969年からの5年で、以前の5年間の倍にする』と提言。

 

それ以降『世界銀行』は急激に融資実行を拡大します。

 

彼が就任するまでの22年間の総融資額よりも、彼の最初の一期四年の総融資額の方が大きくなるほど彼の存在は組織内外でインパクトを与えます。

 

また、これまで『世界銀行』の主な財源は加盟各国の拠出金でしたが、ロバート・マクナマラ氏はこれに頼らず『世界銀行債』を多く発行する事でマーケットからの財源を確保します。

 

それまで『世界銀行』における融資実績になかった教育等を始め、社会分野への融資を行い始めたのも丁度この時期です。

 

 

  • 1970年〜

『国際通貨基金』はそれまで世界銀行加盟国へ行っていた国際収支から国内金融秩序安定へと業務を変異し、またこれら国々への監視助言も併せて行い始めます。

 

発展途上国への拡大融資が進み債務問題が出始めたのも丁度この時期です。

 

 

  • 1980年〜

旧社会主義諸国も市場経済制度へ次々と移行し始めます。

 

また、『世界銀行』は国際通貨基金と共同で経済危機に陥った発展途上国に対し、支援の条件として挙げたのが構造調整政策の実施です。

 

これは加盟国における、大きくなり過ぎた無駄な公的分野(公共事業等)の縮小や、各種補助金や公務員の給与削減により支出の削減を目的とした政策です。

 

簡単に言うと経済を自由化させ、自由競争の下で経済を成長させようというものです。

 

しかしこの公的分野の縮小により失業者が溢れかえり、教育や医療等の質低下により社会情勢が著しく低下していきます。

 

更に民間融資の低迷により『世界銀行』と国際通貨基金からの融資が後発途上国への融資に大部分を占め、回収不能に陥った時期と重なります。

 

『世界銀行』における、世界での役割が重要性を増し、またこれに付随した業務が拡大の一途を遂げていきます。

 

組織としての規模も大きくなり、またそれを補完する機関が必要となり、1956年には『世界銀行』では、それまで融資できなかった民間企業に対し融資を行う国際金融公社が設立されます。

 

1960年には、『世界銀行』からの融資が困難な貧しい発展途上国向けの融資を目的とした国際開発協会を設立。

 

1966年に発展途上国と外国投資家との紛争を仲裁する国際投資紛争解決センターが設立されます。

最後に、途上国への投資に対し保証を行う業務、またサービスや助言をも行う多国間投資保証機関が設立され、現在の『世界銀行グループ』という巨大な機関となったのです。

 

 

 

世界銀行とは、分かりやすく
日本の借金は全額返済

『世界銀行』と日本との歴史

 

  • 1952年:『世界銀行』へ加盟
  • 1953年:『世界銀行』から、8億6千万ドルの借り入れを開始
  • 1967年:『世界銀行』における、『投資適格国』リストから外れる
  • 1971年:『世界銀行』における『5大出資国』の1国になる
  • 1990年:『世界銀行』での借り入れを完済

 

『世界銀行』において、1950〜1960年代は復興途上国へのインフラ投資が全融資額の半分以上を占めていました。

 

この中の主要融資先の一つが日本です。

 

上にも示しましたが日本の借入総額は8億6千万ドルにも及びます。

 

この借入資金は東海道新幹線や名神高速道路、東名高速道路へのインフラ整備に当てられます。

 

後に日本経済は活況に入り、『世界銀行』からの借り入れを続けていることに他の加盟国が反発し、1967年には新規融資は全て停止されています。

 

後に日本は大きく経済成長を遂げ、『世界銀行』における投資適格国からも無事卒業し、『世界銀行』への純出資国となっていきます。

 

 

 

世界銀行とは、分かりやすく
『世界銀行グループ』は大規模なネットワーク

『世界銀行グループ』とは

 

『世界銀行』は設立以降、世界における役割が拡大し組織を改革する必要性があり、1956年には『世界銀行』で融資を行えなかった民間企業への融資を行う国際金融公社という組織を立ち上げています。

 

また、1960年には『世界銀行』から融資を受ける事が出来ない発展途上国への融資業務を担った国際開発協会が設立されます。

 

これに付随し、発展途上国への投資を行っていた外国投資家との紛争を解決するために国際投資紛争解決センターも設立。

 

最後に発展途上国の投資に対し保証を行う多国間投資保証機関が設立されます。

この多国間投資保証機関は投資に対し保証を行うだけではなく、投資国に対しサービスやアドバイスをも行う機関です。

 

  • 1945年:『国際復興開発銀行(IBRD)』設立
  • 1956年:『国際金融公社(IFC)』設立
  • 1960年:『国際開発協会(IDA)』設立
  • 1966年:『国際投資紛争解決センター(ICSID)』設立
  • 1988年:『多国間投資保証機関(MIGA)』設立

上記、5つの機関が『世界銀行グループ』と呼ばれています。

 

 

 


『世界銀行グループ』の各役割分担

 

『国際復興開発銀行』とは

 

  • 英語表記:International Bank for Reconstruction and Development 通称:『IBRD』
  • 設立:1945年
  • 主たる目的:中堅所得国に対し、開発資金等を融資する目的で運営されています。開発資金等に必要な資金は、金融市場で『世界銀行債』を発行し、これによって賄っています。国際復興開発銀行は元になった世界銀行グループの機関なので、わかりやすく言うと狭義としての『世界銀行』とは、この国際復興開発銀行の事を指します。

 

 

『国際開発協会』とは

 

  • 英語表記:International Development Association 通称:『IDA』
  • 設立:1960年設立
  • 主たる目的:国際復興開発銀行の融資基準に属さない、貧困国への開発資金等を援助する、第2(2番目の)『世界銀行』とも呼ばれている機関です。貧困国にあてた融資なので、融資条件は緩く、国際復興開発銀行に比べてかなり緩和されています。また案件にもよりますが、この低い融資条件にも満たない件に関しては、条件等が揃えば贈与というカタチで賄っているのが実情です。この開発資金等で融資される原資の多くは先進各国からの拠出金により調達しています。わかりやすく言うと広義としての『世界銀行』は、この国際復興開発銀行と国際開発協会の2つになります。

 

 

『国際金融公社』とは

 

  • 英語表記:International Finance Corporation 通称:『IFC』
  • 設立:1956年
  • 主たる目的:国際復興開発銀行や、国際開発協会での融資は、国や政府向けが主となります。発展途上国における民間企業への融資は、この国際金融公社が行っています。

 

 

『多国間投資保証機関』とは

 

  • 英語表記:Multilateral Investment Guarantee Agency 通称:『MIGA』
  • 設立:1988年
  • 主たる目的:発展途上国への融資保証を行い、諸外国から融資を促進するための機関になります。

 

 

『国際投資紛争解決センター』とは

 

  • 英語表記: International Center for Settlement of Investment Disputes 通称:『ICSID』
  • 設立:1966年
  • 主たる目的:発展途上国と外国投資家との投資紛争を仲裁するための機関にあたります。

 

 

 

世界銀行とは、分かりやすく
『総務会』の重要性

『世界銀行』の組織図

 

  • 『総務会』

『世界銀行』の意思決定機関は『総務会』からなります。

 

 

  • 『総会』内容

『総務会』は国際通貨基金(IMF)と合同で年に一度の『総会』を行います。『総会』は3回のうち2回がIMF及び『世界銀行』の本拠地でもあるワシントンDCで行われます。残り1回はそれ以外の加盟国で開催されます。

 

 

  • 『総務会』メンバー

各加盟国より総務1名、代理1名の計2名が『総務会』へ参加できます。この総務と代理には、大概その加盟国の蔵相や中央銀行総裁が選出される事が多く、また加盟国の出資比率において『世界銀行株』1株につき1票の得票権利を持てる事になります。

 

 

  • 『理事会』メンバー

『世界銀行』における総務会は、その殆どの権限を『理事会』へ委任しています。『理事会』は、『世界銀行』への最大出資国5カ国(2010年迄はアメリカ、日本、ドイツ、イギリス、フランス)から各1名を選出し、その他の加盟国から選ばれた19名の合計24名で構成されています。その他の加盟国19名は、地域別にまとめた選挙区から選出され、中国やロシア、サウジアラビアといった拠出額の大きな国は単独の選挙区を持っていますが、英語圏アフリカとフランス語圏アフリカはそれぞれひとつの選挙区となり、出資額の少ない多くの国は大きな選挙区に属しているのが現状です。

 

 

『世界銀行』での『得票権利』の順位(2010年時点)

 

  1. アメリカ合衆国:15.85%
  2. 日本:6.84%
  3. 中国:4.42%
  4. ドイツ:4.00%
  5. イギリス:3.75%
  6. フランス:3.75%
  7. インド:2.91%
  8. ロシア:2.77%
  9. サウジアラビア:2.77%
  10. イタリア:2.64%

 

 

 


『世界銀行』総裁

 

『世界銀行』における総裁は、理事会により選出されています。

 

この『世界銀行』の総裁は世界銀行グループの5社全てにおいて『総裁』を兼任し、世界銀行グループの業務すべてに携わります。

 

また余談ですが、『世界銀行』の『総裁』にはアメリカ合衆国出身者であること、また国際通貨基金の専務理事にはヨーロッパ出身者が選出される暗黙の了解があります。

 

 

歴代『世界銀行』総裁(歴代順)

 

  • ユージン・メイアー/1946-1947/米国
  • ジョン・ジェイ・マクロイ/1747-1949/米国
  • ユージン・ロバート・ブラック/1945-1963/米国
  • ロバート・マクナトラ/1968-1981/米国
  • アルデン・ウィンシップ・クローセン/1981-1986/米国
  • バーバー・コナブル/1986-1991/米国
  • ルイス・トンプソン・プレストン/1991-1995/米国
  • リチャード・フランク/1995-1995/米国
  • ジェームズ・ウォルフェンソン/1995-2005/米国
  • ポールウォルフォウイッツ/2005-2007/米国
  • ロバート・ゼーリック/2007-2012/米国
  • ジム・ヨン・キム/2012-2019/米国
  • クリスタリナ・ゲオルギエバ/2019-2019/米国
  • デビット・マルパス/2019-現在/米国

 

 

 

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